「再エネお預かりサービス」の意味がわからない

Photo by hyt.「再エネお預かりサービス」の意味がわからないです.

いつもの通り結論から.

これ,実際お得になる人がいるのでしょうか? 正直電力会社もシステムが複雑化する分損だと思うんですけど……

です.

再エネお預かりサービスってなに?

まず,これはいつものIT系の話ではなくて,再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)についての話題です.いわゆる太陽光発電したのを買い取ってもらえるというヤツですね.私も実家の母から相談されて初めて知った制度です.

再生エネルギー固定価格買取制度の概要と実際の買取価格などは,

固定価格買取制度(FIT制度)における太陽光発電の売電単価は年々下げられています。このページでは売電価格の推移をご案内し、さらに年々引き下げられる売電価格が売電収入にどう影響を与えているかについて、ご案内しています。

を見ていただくのが分かりやすいのではないかなと思いますが,要は,固定価格での買取契約が満了(住宅向けだと10年)後はどうなるのかってお話です.

買い取ってもらえなくなる訳じゃありません.しかし,これまでと同じ価格ではもちろん引き取ってもらえないどころか,ビックリするくらい買取価格が引き下げられます(いまから10年前だと固定買取価格がキロワットアワー単位で48円だったのが,7円くらいになります).ただし,実際にどこに売るのかは選べます.そして,「再エネお預かりサービス」ってのは,大手電力会社が提供する買い取り方法の一つな訳ですね.

サービスの概要

表向きのサービスの内容は,もちろん

固定価格買取制度の期間満了を迎え、蓄電池をご検討のお客さまへ。「再エネお預かりサービス」なら、太陽光発電の余剰電力を当社がお預かりするため、ご自宅に蓄電池を設置することなく環境にやさしい電気(実質再エネ・実質CO2フリー)がご使用いただけます。

を見て頂ければ分かりますが,要は,

サービス利用者は,電力会社に発電した一定量の電力(ライトとスタンダートの2種類)を預かってもらうために,預かり(サービス)料として一定額(月額,ライト2500円,スタンダート4980円)を電力会社に支払う

というものです.一定量を超える,もしくは自分が使わなかった電気はkWhあたり7円で買い取りとなります.

さて,本サービス,

預かった電気は自動的に単価が一番高い時間帯に充当される

ということが強調されており,最も単価の高い時間帯はkWhあたり27円くらいなので,7円と比較すると単純に売電するよりお得,もしくはトントンかな,という感じがするのではないかなと思います.

実際にお得なの?

と言うことで,実際にどの程度お得なのかを計算してみました(と言うか,母から計算させられました).

まず,ライトプラン(100kWhまでの預かり,サービス利用料2500円)の場合ですが,この場合は,

どう考えても損

です.なぜかと言うと,この制度,単価の高い時間帯に優先的に預けた電力が充当されるということですから,この時間帯に電気をたくさん使えば使うほどお得になるはずです.

さて,例えば母の利用する九州電力の場合,最も単価の高い時間帯と価格は,夏と冬の平日デイタイムで,単価は1kWhあたり26.84円です(オール電化向けの料金で計算です).この時間帯に預かってもらった電気を全部使ったとして,預かってもらえる電力量は100kWhですから,26.84円×100 = 2684円となります.サービス利用量が2500円ですから184円が差額で,一見,ほんの少しですが黒字が出るような感じがします.

しかし,上の計算には,本制度を使わない場合の売電料金が計算に入っていません.売電価格は1kWhあたり7円ですから700円が売電料金です.つまり,2684-700 = 約2000円ですから,単純に売電するより大体500円損ということになります.

なお,春と秋には平日昼間23.95円,休日だともっと下がりますし,そもそも最も電気料金の高い時間帯に預かり電力を全て使い切れるとも限りませんので,実際にはもっと大きく損するということになります.

そして,これはスタンダードプランの場合もほぼ同様です.

スタンダートブランの場合,サービス利用量が4980円で,300kWhまでの預かりです.したがって,最も単価の高い時間帯に預かり電力を使い切ったとして,26.84円×300 = 8052円です.サービスを利用した場合は,約3000円の黒字に見えますが,サービスを利用しなかった場合の売電金額が2100円ですので,実際の黒字は1000円いかないくらいになってしまいます.と言うことで,スタンダードプランの場合は,計算上は黒字になる可能性もありますが,実際には最も単価の高い時間帯に電力を一般家庭で使い切るなんてことまず無いと思います.

と言うのも,一般家庭だと昼間使う電気よりも夜使う電気の方が多いはずです.実際,オール電化の実家でも最も電気を使うのは夜で,昼間はせいぜい150kWhくらいのものです(逆に夜は多くて400kWhくらい使う.これは当然のことで,お風呂のためのお湯を夜作るからです).つまり,単価の最も安い夜に預かり電力のかなりの部分が充当されますし,さらに,そもそも上の26.84円というのは夏・冬のデイタイム限定の料金です.春・秋だと 23.45円ですから,この時期に最も高い時間帯に預かり電力を使い切ったとしても7200円程度となり,この場合はサービス利用してもしなくても電気料金はほぼ変わらなくなってしまいます.つまり,

スタンダードの場合も,得になることはほとんどない

んじゃないかなと思います.実際,実家の場合に細かな数字を元に試算すると季節によっては2000円くらい損という結果になりました.

これ,誰が得するの?

と言うことで,このサービス(制度),

誰が得するんだろう?

って思います.

いや,電力会社じゃないですか?って言われそうですけど,これ,料金の計算が相当に複雑化してますので,その面倒をみるためには大きなシステムの改修がいるでしょうし,そのメインテナンスもしないといけません.これ,そもそも申込者が多ければ良いですけど,そうじゃなければどう考えても全体として考えると面倒が増えるだけだとしか思えません.

あと,預かりサービス,って言われると,自分が必要なときに使える,って感じを受けますが,じゃあ,最も必要なときっていつかと言われたら,その一つは「停電時」でしょう.でもどう考えてもこのサービス利用してたとしても停電時電気が使える訳じゃ無い.

このサービス,蓄電池を買うよりもお得,と言ってますけど,蓄電池を自宅に備え付ける動機は価格的メリットがあるからじゃなくて,どちらかと言えば,非常時に備えてって人が多いんじゃ無いかなと思いますが,この意味でも本サービス(制度),的を外しているように思います.

と言うことで,個人的には本制度,何を目指しているのかサッパリ分かりません.もしかしたら私の試算の仕方がマズイのかなとも思ったのですが……どう考えても間違ってないと思うんですが…….どなたか識者の方,本サービスのメリットをお教えいただけないでしょうか?

以上

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